【フォトエッセイ】星空をめぐる旅、そして物語◎永田美絵——第14回/地球は宇宙の特等席です

第14回 地球は宇宙の特等席です

 歳を重ねると1年が早く過ぎていく気がしますよね。年末年始になると、もう1年が経ったのだと驚きます。 

 この1年という長さは地球が太陽の周りを公転する時間です。古代バビロニアでは太陽や月を観測していました。月は満ち欠けをしながら夜空を動き、太陽も星々の中を巡っていることがわかりました。 
 太陽の通り道に見える星を結んで作ったのが黄道12星座、お誕生日の星座です。同じ季節に同じ星空が見えることで昔の人々は星を使ってカレンダーを作りました。 

 日本では明治時代の初めまで月の満ち欠けをもとにした旧暦を使っていましたが、新暦になっても、1年を24等分して季節を表わす二十四節気は生きていて、みなさんの生活のリズムに織り込まれている大事な暦だと思います。 
 1月20日頃の大寒、2月4日頃の立春、3月21日頃の春分、4月20日頃の穀雨、6月21日頃の夏至などなど。古来、日本人は自然の移ろいから季節の変化を感じ、そこにぴったりな呼び名をつけました。まさに自然の変化と共に生きていた証拠ですね。 

 太陽の周りを地球が一巡りし、また新しい年が始まりました。 
 2026年、今年も二十四節気を確認しながら、私たちはどんなふうに生きていくのでしょう。そして今年はどんな星空を見ることができるのでしょうか。 

 天文現象は、宇宙の中で地球と他の天体が織りなす位置関係の変化で起こります。 
 たとえば1月3日から4日頃のしぶんぎ座流星群は、地球が彗星の軌道と交差し、宇宙のチリと地球の大気が衝突することで起こります。3月3日の皆既月食は、太陽、地球、月が一直線に並び、地球の影によって月が隠される現象です。 
 月も地球も他の星もすべて動いているからこそ、ある瞬間、地球から素晴らしい自然現象を見ることができるのです。 
 この原稿を書いている今も、地球は宇宙の中を秒速600キロメートルという、ものすごいスピードで動いています。 

 果てしない宇宙の広さと、そこに生まれた多くの星々。 
 星を見上げて暦を作った人々に想いを馳せてみると、私たちはとてつもないところに存在し、生きているということがわかります。 

 私たちは2026年、どんな美しい光景に心躍らせることになるのでしょうか? みなさんも地球という特等席から素晴らしい星空をお楽しみください。 

©国立天文台 
永田 美絵

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら

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