【フォトエッセイ】星空をめぐる旅、そして物語◎永田美絵——第15回/二月をなくしたい?

第15回 二月をなくしたい?

 二月三日は節分です。 
 昨年、『NHK子ども科学電話相談』で五歳の男の子から、 
「二月は鬼が来て怖いので、なくすことはできますか?」 
という質問がきました。 
 子どもの発想には毎回本当に「まいった!」と声を上げてしまうことがあるのですが、この質問にはどう答えようかと迷いました。 

 いろいろと聞いてみると、去年はお兄ちゃんが鬼をやっつけてくれたけれど、次は自分もやっつけないといけないので、鬼が来る二月をなくしてほしいとのこと。 
「でも、二月は大切な月なんだよ……」と私も必死になり、 
「お兄ちゃんと力を合わせれば、きっと鬼をやっつけることができるよ! がんばって!」 
とアナウンサーの方も一緒に応援したのですが、 
「無理……」と涙声になります。 

 二月はカレンダーを見ればわかるとおり、他の月と比べて日にちが半端だと感じますが、当然、これにはれっきとした意味があります。 
 古代から人々は農業のため、いつ種まきをすればよいのか、いつ雨が降るのかなど、正確な暦が必要でした。 
 太陽や月、星を観測し、太陽が夜空の星々の間を巡っていくことに気づきました。この太陽の通り道が黄道で、夜空を太陽が一周する時間を一年(365日と4分の1日)と決めたのです。 

 カレンダーの出発点は春分点といって黄道と天の赤道の交点。 
 これが当時は三月だったため、一年の始まりは三月となり、三月から大の月31日、四月は小の月の30日、五月は大の月31日、六月は小の月30日――と大小と月の日数を決めました。 

 ところがここに登場したのが初代ローマ皇帝であるアウグストゥスです。彼の誕生月は八月。 
「わしの誕生月が小の月なんて、許せん!」とばかり、30日だった八月に、二月から一日拝借して31日に変えてしまったのです。 
 そもそも二月は一年最後の月ですから短くなっていたのですが、さらに日にちが少なくなり、現在は28日、四年に一度一日を足して29日となったわけです。 

初代ローマ皇帝アウグストゥス(紀元前63年~紀元14年)。「パクス・ロマーナ」の礎を築いた 

 このように暦は、太陽が天をめぐる時間や星が動く時間など天文時と呼ばれる星を頼りに決めていましたが、近年この天文時に問題が出てきました。 
 規則正しい原子時計を使い時間を測定すると、地球の自転や公転に揺れが出ることがわかったのです。 
 そこで定期的に暦を補正するため「うるう秒」を入れるようになりました。みなさんの知らない間に、実は一日24時間でなく、24時間1秒の日があったのです。 
 実際1958年から比べると33秒も差が出ているのです。それだけ地球の自転が遅くなっているといいます。これから先、暦の変革があるかもしれませんね。 

 さて、こんなふうに二月は一年のカレンダーの中ではなくてはならない大切な月です。 
 節分は、季節の変わり目ですから、からだも不調になることが多いとされ、厄払いをし、あらたな季節を迎える日でもあります。 
 鬼に打ち勝つべく、豆まきをする――節分ならではの行事ですね。 

 こんな内容を回答として話した結果、最後には男の子から元気な「ありがとうーございましたー!」という声を聴くことができました。 

コロッセオと星の軌跡(ローマ) 写真提供=佐々木勇太(旅する星空解説員)
永田 美絵

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら

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