近年、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)などのSNSが登場し、いろいろな人とつながり情報交換や交流ができるようになった。一般人でも気軽に情報発信ができるようになったが、画像や動画を無断で使用したことによるトラブルも多い。SNSに投稿する際、どのようなことに気を付ければよいのだろうか? 著作権に詳しい内田剛さんに聞いた。
著作権とは表現者の労力を保護するもの
――「著作権」という言葉をよく耳にしますが、改めて著作権とはどういうものかについて教えてください。
著作権は「著作物」を対象にしています。頭の中にあるアイデアを外の世界に「表現」としてアウトプットしたものが著作物で、これを保護することを目的としています。表現のコピーを原則として禁止するというのが著作権の内容です。
――著作物にはどのようなものが含まれるのですか?
目や耳を通して楽しむものすべてが著作物になります。たとえば絵画や彫刻などの美術、写真、映画、音楽、ダンス、建築、もちろん文章も、著作物として著作権の保護の対象になります。ここでいう映画には、YouTubeやTikTokの動画も含まれます。要は動きのある映像ということですね。それから著作物は国内のものだけではなく、外国のものも含まれます。ですので、「外国著作物だから問題ないだろう」と勝手に翻訳して使ったりしていると、唐突に著作権侵害だと言われてしまうことになる可能性があります。

では、なんのために著作権があるのか。これは苦労して表現をしてくれた人の労力に報いる、というのが基本的な説明です。作品をつくる労力に対して、それを保障するために、作品が勝手にコピーされないように守る。これが著作権法の基本的な考え方です。
近年、インターネットが登場したことで、著作権の対象としているものが大きく変わってきています。もともとは出版物や放送、CDといった大々的な情報発信をするもの、いわゆる大きなメディアが主な対象でしたが、インターネットの普及で、インターネットを使う人全員がその対象になりました。インターネットはすべての国民が使いますので、その全員が対象になるという意味で、著作権を取り巻く状況が大きく変わってきています。
――そうすると法律も変わっているのでしょうか?
大きな括りとしては何も変わっていません。英語で言えば「コピーライト」、コピーを規制する権利という性質自体は何も変わっていないので、インターネット上においても気をつけるべきベースは変わらないのですが、SNSを含む新しいメディアが増えていることで、皆さんが著作権法に接する場面が昔よりも増えています。
もうひとつの問題は、著作権より少し広い権利である知的財産権の性質から生じてきます。この権利は目に見えないものを対象にしていますから、権利に触れてもわからない。権利者から連絡が来て、はじめて「そうだったのか」ということになります。
――著作権は知的財産権の中に含まれるのですか?
そうですね。知的財産権といった場合、大まかには特許権、商標権、デザインに関する意匠権、著作権あたりが含まれます。特許権、商標権、意匠権の3つと著作権の違いは、登録をしなくても権利が発生する点です。商標や発明は登録しないと保護されませんが、著作物は登録をせずとも保護されます。
著作権には13種類の権利がある
――インターネットの使用に関連する著作権は、どのようなものがあるのでしょうか?
まず、著作権法の中では、じつは「著作権」という権利を直接定めていません。
――え!? 「著作権」という権利は書かれていないんですか?
そうなんです。「著作権」というのは複製権であるとか、上映権であるとか、いくつかの権利をまとめた総称で、著作権という具体的な権利が書かれているわけではないんです。インターネット通信が普及してきたところで、通信に関連して「公衆送信権」というものが加わり、現在のところ13種類の権利をまとめて著作権と呼んでいます。
権利としては13種類あるのですが、SNSに関わる項目でいうと、「複製権」と「公衆送信権」、それから「送信可能化権」の3つに関しては知っておいたほうがいいですね。
たとえば他人がSNS上にアップロードした写真データをダウンロードして、自分のSNSに掲載したとします。この行為については、他人の写真データをダウンロードしたときに「複製権」の侵害、自分のSNSにアップロードをしたときに「送信可能化権」の侵害、実際に写真のデータが他のユーザーに送信されたときに「公衆送信権」の侵害が生じます。著作権の内容としては別々の権利侵害なんですけれど、説明としては著作権侵害ということになるわけです。

――リンクやリポスト(リツイート)というのはどうなのですか? リポストすると元の投稿をそのままコピーして送ることができますよね。
まずリンクですが、リンクは原則として著作権の侵害にはなりません。X(旧Twitter)のリポストはインラインリンクと呼ばれる表示方法になっていて、写真付きの他人の投稿文をリポストすると、自分の投稿文章と他人の投稿中の写真がポスト(ツイート)画面に表示されます。これはあたかもコピーをしてきたように見えるのですが、コピーしてきたわけではなく、リンクになっているだけなので複製にならないんです。
公衆送信というのは、著作物を公衆に向かって送信することです。ここにはもちろん、インターネット上の送信も含まれます。リンクの場合、先ほどの他人の写真データを勝手にダウンロードして、それを自分のSNSにアップロードして送信するというのとは異なり、リンクを貼った人は、データを送信するためのアップロードもしてないし、実際の送信もしていません。ですので、インターネット送信に関する権利の侵害にはなりません。
――ということは、問題になる場面は割合と限られているんですか?
そうとも限らないんです。SNSに関しては、著作権侵害になるかどうかはグレーゾーンの部分がかなりあって、判決によって違いがあったりするんですね。
ポストをそのままリポストをすれば、リンクのかたちで表示することができるので著作権侵害にはならないのですが、ポストをスクリーンショットにして画像として複製し、これを自分のポストに添付してアップロードした場合はどうなるか。これに関しては、確定した判決がありません。スクショによるポストも引用に該当するという判決がある一方、引用に該当しないとした判決もあったりします。
SNS上での著作権の判断はケースバイケース
――動画の一部だけを切り取ってアップロードするというのはどうなのでしょうか?
もちろんダメです。まず、他人の表現を勝手にSNS上にアップロードする行為は原則としてダメと考えてください。
写真に関しても、トリミングして一部分だけ切り取ってアップロードした行為も著作権法では問題になり得ます。この場合、著作権法の中の「著作者人格権」というものも絡んできます。著作者人格権というのは、著作者の心情的な利益を保護するもので、著作物を創作すると、著作者の権利として著作者人格権と著作権が与えられるんですね。
著作者人格権には、「公表権」、「氏名表示権」、「同一性保持権」という3つの権利があります。未公表のものについては、それを勝手に公表する行為が著作者人格権の侵害として禁止されます。氏名表示権というのは、著作物について、著作者名やペンネームを表示する、もしくは表示しないとする権利です。同一性保持権とは、著作物そのものの意に反する改変を禁ずるものです。作者の意向に反して改変すると同一性保持権の侵害になります。
著作者人格権というのは、著作権とは別の権利ですので、引用して利用する場合のように表現のコピーが著作権の侵害にならない場合であっても、著作者人格権の侵害が問題となることがあります。
たとえば、画像をカットして、もともとあった著者表示が消えているような場合であったり、写真をトリミングして一部分だけ切り取ってアップロードした行為であったりが、氏名表示権、同一性保持権の侵害になったりします。
ちょっと特殊な事例ですが、他人の写真もしくは絵を下敷きにして、その上からフォトショップなどで新たに画像を重ね合わせて、重ね合わせた画像をアップロードしたものが同一性保持権の侵害にあたるかどうかが問題となった判決で、侵害にはあたらないとされた事例があります。
一方で、他人が撮影した写真に対し、写真の撮影手法を批判する目的で、説明のために上から白線を加えてアップロードしたという事例では、やむを得ない改変ではないので、同一性保持権の侵害にあたると判断されたケースもあります。
――生成AIを使って、元の写真の画像がわからないぐらいに変えて、それを使用した場合は?
写真は、被写体を決め、どのように撮るかを決めて、もしくは時間的な変化があるタイミングを選んで写真を撮ると、著作物として保護を受けることができます。著作権の侵害や同一性保持の侵害にあたるかどうかは、元の写真の表現を知ることができるか、わかるかがひとつのポイントになります。
元の写真がどのようなものであったかがわからないほど変えてしまったら、それは複製でも改変でもないので、写真の著作権の侵害にも同一性保持権の侵害にもならないと判断される可能性があります。ですので生成AIを使って、元の画像を読み取ることができない状態にまで変えてしまえば、それを使っても侵害とはならないかもしれません。
――お聞きしていると、何が著作権や著作者人格権の侵害になるかは、かなりケースバイケースですね。
そのとおりです。著作物について、改変が著作権や著作者人格権の侵害になるかどうかの判断はかなりケースバイケースの要素が強い。ですから、手は加えないほうがいいという結論になります。
著作権法はそもそも、いろいろな人がいろいろなことを行うことを前提につくられていません。出版なり、音楽なり、ある程度の規模の業界で表現を発信していくことを前提につくられていますので、インターネットというニューメディアにおいては、個別のケースで判断していくしかないんですね。
高額の損害賠償を請求されるケースも
――著作権を侵害した場合はどうなるのですか?
民事による「救済」と、刑事による「制裁」があります。まず著作権をもつ者は著作権が侵害された場合、民事上の救済を求めることができます。具体的には、差し止めといって、その行為をやめさせることができる。インターネット上での情報発信をやめろと強制的にやめさせることができます。それから損害賠償の請求ができます。
インターネットは匿名性の高い世界ですが、プロバイダーに発信者情報開示の請求をすることで個人情報を特定することができますので、誰が発信しているかを突き止めた後、損害賠償を請求できます。これまでも、民事では「この程度で?」と思われるようなレベルで訴えられているケースがありますから、SNSの利用でも民事による責任追及は普通に起き得ると考えておいたほうがいいですね。
――損害賠償の金額はどのくらいになるのでしょうか?
有料動画を勝手に無料配信プラットフォームにアップロードして配信していた事例で、3つの動画について1000万円の損害賠償が認められたことがあります。もちろん、有料動画の金額や再生回数が増えるほど損害額も増えますから、損害賠償額が数億円になることもあり得ます。
――刑事による「制裁」というのは?
著作権侵害罪とよばれる刑罰が著作権法に規定されていて、10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金が科されます。ただし親告罪ですので、権利者が告訴しなければ刑事裁判は始められません。また、よほどのことがない限り、SNS上の著作権侵害で刑事罰が科されることは稀です。ほぼ、ありません。
刑事裁判になった例でいうと「漫画村」というサイトがありました。いわゆる海賊版マンガを大量にアップロードしていたというものです。これに関してはアップロードをした者も、サイト運営者も有罪となり、刑事罰の対象になっています。SNSの利用で刑事罰が科されることはほぼないと言いましたけれど、動画共有サイトに有料動画のデータの全部を多数アップロードしたりすると、場合によっては刑事罰の対象になる可能性があります。
――SNSは、まだまだグレーゾーンが多いけれど、「これぐらいなら」と軽く思わないほうがいいですね。
表現の形としては、言葉や音、体の動き、絵、彫刻、建築物、設計図、地図、映像、動画、静止画像、プログラムなど、さまざまな種類がありますが、他人がつくったこれらのものはすべて著作物であり、著作権や著作者人格権で守られていると理解することが、まずは大前提です。
ちょっとした改変とか、パクリとか、ネット上ではものすごくたくさん行われていますし、「みんなやっている」と思うかもしれませんが、いつ自分が著作権侵害で訴えられるかはわかりません。したがって、ネットリテラシーのひとつとして、他人の表現、物の利用には気をつけることが大事ですね。
簡単にアドバイスするとしたら、他人が作った表現を勝手に使うのはやめましょう。勝手に改変するのもやめましょう。引用する場合は、自分の表現のために必要な範囲での利用を心がけ、ちゃんと出典を表示しましょう。何か表現を発信したい場合は、新しい表現を自分で創り出していくようにしましょう。と、いうことです。
(構成・八木沢由香)
うちだ・つよし 東海大学法学部法律学科准教授。東海大学総合科学技術研究機構助教、同大法学部法律学科講師、マックス・プランク イノベーション競争研究所客員研究員などを経て、2023年4月から現職。専門分野は知的財産法、特にファッション、デザインに関連する法制度。共著『ファッションロー第2版』(勁草書房)、共著『重要判例分析×ブランド戦略推進』(中央経済社)など。

