〝科学って不思議で、ちょー楽しい‼〟。神奈川県内を中心に科学実験教室やサイエンスショーを行い、小中高生から大人気の「ドクターアキヤマ」こと東海大学工学部の秋山泰伸先生。楽しくて面白い、人気の科学教室のエッセンスをご紹介します。お家でもできる簡単なものばかりなので、ぜひ実験してみてください。

第5回/スーパーボールっぽいものを作ってみよう!
ドクターアキヤマの科学教室へようこそ! 第5回は洗濯のりを使ってスーパーボールっぽいものを作ってみます。第3回の万華鏡に続いて〝ぽいもの〟シリーズですね(笑)。これはわりと身近な実験なので、作ってみたことがある人が多いかもしれませんね。
今回使う洗濯のりは、PVA(ポリビニルアルコール)が主成分のものです。ん? どこかで聞いたような気がしますか……? そう、以前にも使いましたよね。第2回のカラフルスライムの実験で使ったものと同じです。
じつは洗濯のりはスライムにもなるし、スーパーボールにもなる凄いものなんです。では、PVAがどんなものだったか、ちょっとおさらいしてみましょうか。
PVAってどんなもの?
洗濯のりって何に使うものでしたっけ? えっ、洗濯物をくっつける? それはさすがに違いますよ~(笑)。
洗濯したシャツなどをパリッとさせて、型くずれやしわを防ぐために使うものです。洗ったあとの仕上げのときにちょっとだけ入れて、洗濯物をひたして乾かすとパリッとなります。ものをくっつけるのりも乾くと硬くなりパリパリになりますよね。
ドクターアキヤマが子どものころは、炊いたお米を水で溶いて洗濯のりとして使っていました。でも、今の一般的な洗濯のりは、お米などを使ったものではなく、PVAというプラスチックを使ったものが多いんです。
このPVAですが、私たちが普通にイメージするプラスチックとは違い、水に溶けて、接着力を持つという特徴があります。また、微生物によって分解されやすいため、地球にずっと残る可能性が低いので、排水として流すことができます。ですから、洗濯のりに限らず日用品や工業製品などいろいろな分野で使われています。
このPVAが水に溶けている状態は、目に見えない細かい春雨のようなものが水の中に散らばっているイメージです。微生物はPVAを分解することができるので食べてもよいのですが……、春雨みたいだからといっても人間は食べちゃだめですよ(笑)。

スーパーボールを作ってみよう!
では、さっそくスーパーボールを作っていきましょう!
皆さん、もちろんスーパーボールって知っていますよね。そう、合成ゴムでできたとてもよく弾むボールです。お祭りや縁日の「スーパーボールすくい」とか、イベントの景品なんかでもらったことがあるんじゃないかな?
今回の実験で作るスーパーボールはゴム製ではないので、正確に言うとスーパーボールっぽいものですね。でも、面倒なのでスーパーボールを作るという表現を使っていきましょう(笑)。
まずは、水に溶かしてインクで色を付けた洗濯のりを用意します。その洗濯のりをコップの1/4ぐらいまで入れてください。

シアン、マゼンタ、イエローの色の三原色を用意すれば、いろんな色を作り出すことができますよ。スライムを作った時と一緒ですね。自分の好みの色になるよう、いろいろ試してみてくださいね。
そして、そこに塩を加えて、割り箸などでかき混ぜてみてください。どうなりましたか? だんだん塊ができてきましたか? うまく固まらない場合は、少し塩を足してみてくださいね。
うまく固まったら、塊を取り出して、手で丸く形を整えて、キッチンペーパーなどで水気をとれば、スーパーボールの完成です!
まん丸にはならないかもしれませんが、乾かせば、けっこう弾みますよ。どうですか、ゴムでできたスーパーボールに近いものができたんじゃないでしょうか。ただ、放っておくとどんどん水分がなくなって硬くなっちゃいます。まあ、あくまでもスーパーボールっぽいものですから(笑)。

洗濯のりからスーパーボールができる仕組み
では、なぜ洗濯のりからスーパーボールができたのかを考えてみましょう。
じつは、この実験のキーポイントは〝食塩〟なんです。食塩って水が大好きなんですよ。水の中に入ると〝イオン〟というものになって水を電気的に引っ張ってくっつける性質があります。さらに、しょっぱい食塩水は周りから水を奪って、薄くなろうとするんです。
みなさん〝キュウリの塩もみ〟って知っていますか? 暑くなるこれからの季節には美味しいごちそうですよね。食べるとパリッと音がする新鮮なキュウリに塩を付けてもむと、キュウリからどんどん水が出てきて、しなっとなった塩味のキュウリのできあがり!
これは、塩がキュウリの中の水を引っ張って、さらに、濃い塩水が薄くなろうとしてキュウリからどんどん〝水〟を吸い出すからなんです。キュウリの表面が邪魔して塩はキュウリの中に入って行けないので水を吸い出すだけ。これは濃度が薄い液体から濃い液体に水が移動しようとする力で〝浸透圧[しんとうあつ]〟って言います。皆さんも高校生ぐらいになったら詳しく勉強すると思います。
ちなみに、これって大学で習う〝エントロピーは増大する〟というとっても難しい話に繋がるんですよね。チョーわかりやすく言うと、〝物事はきっちり分かれているより全体に散らばるように進む〟ということ。だから、濃度が薄い食塩水と濃い食塩水が水だけ通す膜で接していると、薄い方から水が移動して、全体が同じような中ぐらいの食塩水になろうとするんです。さすがにちょっと難しいかな……。
このことから考えると、ドクターアキヤマの机の上に物が散らばるのは、片付けができないからではありません。きっと〝エントロピーが増大するから〟です。エントロピーは日本語では〝乱雑さ〟なんて訳しますしね(笑)。
さて、話を戻しましょうか。洗濯のりは水の中にPVAというものが溶けている状態でしたよね。溶けているといってもPVAは消えちゃっているのではなく水の中に散らばっています。この時、PVAの周りに水の分子がくっついているから水の中に潜んでいられるのです。
これに食塩を入れると食塩がイオンになって水を引っ張る、つまりPVAと水を奪い合う事になる。で、結果、食塩が勝っちゃう。つまり、食塩がPVAから水を奪い取っちゃって、PVAが集まって水の中に潜んでいられなくなって固まって出てくるんです。この現象、専門用語では〝塩析〟っていいます。これも高校の授業で習う話なんですよ。

今回の実験は、塩加減と混ぜ方がポイントです。たくさん塩を入れすぎると、塩の塊を含むスーパーボールになっちゃいます。様子を見ながら少しずつ加えていくようにしましょう。速すぎず遅すぎず、グルグルとかき混ぜて。
あと、今回の実験でできたスーパーボールはちょっと塩っぽいんですよね~。家の中で投げて遊んだりすると、部屋が塩だらけになって家族から嫌がられるかもしれません。そこは注意してくださいね(笑)。


ドクターアキヤマ(本名:秋山泰伸) 1966年福岡県生まれ。九州大学大学院理学研究科博士前期課程修了。博士(工学)。九州大学助手を経て、現在は東海大学工学部学部長補佐。計算機マニアとして知られているほか、神奈川県内を中心に、主に小中高生を対象とした科学実験教室を開催している。テレビ、ラジオ、新聞などマスメディアやSNSに多数登場。著書に『愛しの昭和の計算道具』(東海教育研究所)。
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