〝科学って不思議で、ちょー楽しい‼〟。神奈川県内を中心に科学実験教室やサイエンスショーを行い、小中高生から大人気の「ドクターアキヤマ」こと東海大学工学部の秋山泰伸先生。楽しくて面白い、人気の科学教室のエッセンスをご紹介します。お家でもできる簡単なものばかりなので、ぜひ実験してみてください。

第6回/人工イクラを作ってみよう!
ドクターアキヤマの科学教室へようこそ! 第6回は人工イクラを作ってみます。皆さん、イクラって知っていますよね。そう、オレンジ色の丸いもので、食べるとちょっと塩っぽくて、プチプチした食感のやつです。
イクラは好きですか? ちょっと好き嫌いが分かれるかな? イクラの軍艦巻きなんか、とっても美味しいですよ。ただ、ドクターアキヤマも子どもの頃はあまり好きじゃなかったな~。お寿司はイクラの軍艦巻きとかよりも、甘い卵焼きとか海老とかのほうが好きでした。
ところで、イクラの語源って知っていますか? もともとロシア語で魚の卵や小さくて粒々したものを表す〝イクラー〟から来ているそうです。日本語だとイクラはサケの卵のことを指しますよね。
でも、ロシアでは、サケだけではなくすべての魚の卵のことを〝イクラー〟と呼ぶそうです。だから、キャビアも、数の子も、たらこも、すべてイクラーなのよね。なんて、話をしていたら、ちょっとお腹が空いてきちゃったな~(笑)。

人工イクラを作ってみよう!
では、さっそく人工イクラを作っていきましょう! イクラは、中が液体で表面がゼリーのようになっていますよね。今回の実験では、これを再現してみたいと思います。とっても簡単な実験ですよ。
さっそくですが、皆さんに3種類の清涼飲料水を配ります。清涼飲料水って何? ジュースじゃないの?って、思いましたか? ちょっと豆知識ですが、日本では正式に〝ジュース〟と表示して良いのは100%果汁のものだけです。だから、みんなが思うジュースの多くは、正しく表現すると清涼飲料水ってことなんですね。
今回、実験のために用意したのは、ぶどう味の炭酸飲料、栄養ドリンク、乳性飲料の3つです。もちろんお店で売っている普通に飲めるものですよ。軽く振ってみてください。少しトロっとしていませんか? いつも飲んでいるサラッとした状態とはちょっと違いますよね。じつは実験のタネとなるあるものを溶かしてあるんです。
そして、もう一つ秘密の液体を用意してあります。この透明な秘密の液体の中に、スポイトを使って少しずつ、先ほどの清涼飲料水を入れてみましょう。ポトン、ポトンと垂らしていく感じで。さて、どうなりましたか? ぶどうの色をした丸い粒や栄養ドリンクの黄色い丸い粒ができましたよね。
スポイトで垂らした清涼飲料水が、秘密の液体に入った瞬間に表面がゼリーみたいに固まって、でも中はまだ液体という、まさにイクラと同じような状態になりました。 これは鮭じゃなく人間がつくったイクラっぽいものなので、人工イクラというわけです(笑)。ただ、乳性飲料の場合は、白い人工イクラがうまく作れなかったかもしれません。

トロっとした清涼飲料水と秘密の液体の正体
なぜ人工イクラができたのかを考えてみましょう。
今回、用意した清涼飲料水の中には、アルギン酸ナトリウムを溶かしてありました。どういうものかというと、とろみを出す添加物として、食品に使われているものなんです。
皆さんは、昆布やワカメなどの海藻を触ったことがありますか? 海藻を手で触ると、ちょっとヌメヌメしていませんでしたか? 海藻に含まれるこの水溶性食物繊維からアルギン酸ナトリウムは作ることができます。
清涼飲料水にアルギン酸ナトリウムが溶けている状態は、細かい春雨のようなものが、たくさん水の中に溶けている様子をイメージしてください。ん? このフレーズ、どこかで聞きましたね。そうです、第2回のカラフルスライムや第5回のスーパーボールっぽいものを作ったときのPVA(ポリビニルアルコール)が水の中に溶け込んだ状態が、同じような感じでしたよね。
人工イクラの実験では、清涼飲料水100mLに対してアルギン酸ナトリウム1gを溶け込ませたものを使います。PVAと違ってアルギン酸ナトリウムは人間が食べても問題ありませんよ(笑)。
このアルギン酸ナトリウムが入った清涼飲料水を、秘密の液体の中にたらすと人工イクラができました。では、この秘密の液体の正体はなにかというと……。水に乳酸カルシウムをたっぷり溶け込ませたものです。皆さん、もちろんカルシウムは知っていますよね。乳酸カルシウムは、カルシウムを補うための食品添加物として用いられています。
「架橋」がポイント!
アルギン酸ナトリウムは清涼飲料水に溶けるとアルギン酸イオンとナトリウムイオンに分かれます。その清涼飲料水の中のアルギン酸イオンが、秘密の液体の中のカルシウムイオンと出合うと、なんとカルシウムイオンがくっつくんです。
さらに、カルシウムイオンはアルギン酸イオン同士をくっつける働きがあります。そう、まるでアルギン酸イオン同士に〝橋を架けるように〟。はい、これは〝架橋〟という現象です。皆さん架橋って覚えていますか? 忘れた人は「ドクターアキヤマの科学教室」の第2回カラフルスライムの実験を読んで復習しましょう!
カルシウムイオンがアルギン酸イオン同士を架橋して、まるで、ゼリーの膜みたいになります。でも、表面が架橋した膜で覆われてしまうと、もう、その中にカルシウムイオンは入っていけませんから内側は液体の状態のまま。これで、人工イクラの完成です。

スライムの実験では、ホウ酸イオンがPVAを架橋していました。でも、この時の架橋は緩やかなんですよね、くっついたり離れたりしやすいのです。だから、膜みたいにはならずに、洗濯のり全体のPVAを架橋できるのです。緩やかに結び付けてるので、スライムは自由に形も変わるし、手に載せるとねっとりと広がって下に垂れ落ちたりします。
でも、今回の人工イクラの架橋は強いんです。くっつくとなかなか離れません。人工イクラは手のひらに載せてもその形が変わりませんよね。同じ架橋でも、物質によってつなぐ強さが違うんです。
そうそう、先ほど乳性飲料では実験がうまくいかないかもしれないといいましたよね。これはなぜかというと、乳性飲料は乳製品ですから、もともとカルシウムを含んでいるんです。すでに一部のアルギン酸がカルシウムとつながっているような状態なので、イクラっぽくなりにくいのです。
ちなみに、たいていの果汁100%のジュースでも人工イクラを作ることはできますが、酸が強い果物だとアルギン酸ナトリウムが溶けにくかったりします。
今回は清涼飲料水で甘めの人工イクラを作ってみましたが、原料を工夫すれば本物のイクラの味に近い人工のイクラも作れます。鮭フレークとだしの素で味付けしてみてはいかがでしょうか?(笑)
アルギン酸ナトリウムも乳酸カルシウムも食品に添加できるものとして売っているものです。だから、実験で作った人工イクラを人間が食べても問題はないのですが、それは衛生管理をちゃんとした場合です。そこは気をつけてくださいね。


ドクターアキヤマ(本名:秋山泰伸) 1966年福岡県生まれ。九州大学大学院理学研究科博士前期課程修了。博士(工学)。九州大学助手を経て、現在は東海大学工学部学部長補佐。計算機マニアとして知られているほか、神奈川県内を中心に、主に小中高生を対象とした科学実験教室を開催している。テレビ、ラジオ、新聞などマスメディアやSNSに多数登場。著書に『愛しの昭和の計算道具』(東海教育研究所)。
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