〝科学って不思議で、ちょー楽しい‼〟。神奈川県内を中心に科学実験教室やサイエンスショーを行い、小中高生から大人気の「ドクターアキヤマ」こと東海大学工学部の秋山泰伸先生。楽しくて面白い、人気の科学教室のエッセンスをご紹介します。お家でもできる簡単なものばかりなので、ぜひ実験してみてください。残念ながら今回はお家で実験できません。

第7回/「ちょー冷たい世界」を体験してみよう!
ドクターアキヤマの科学教室へようこそ! 第7回は、お家ではできない実験なのですが、皆さんに液体窒素を使って「ちょー冷たい世界」を楽しんでもらおうと思います。夏真っ盛りですから気分だけでも極寒になりましょう!
ところで、液体窒素を使った実験を体験したことがある人はいますか? テレビやインターネットでよく見ますが、実際に見たり、触れたりしたことがある人は少ないかもしれないですね。
では、体験したことはないけれど、液体窒素がどのようなものかは思い浮かびますか? すごく冷たい? そうですね、正解です。じゃあ、液体窒素がどれくらいの温度かわかる人はいますか?
− 50℃? いえいえ、そんなものじゃありませんよ。 − 100℃だと思いますか? − 100℃でもかなり冷たいですが、もっと冷たいんです。えっ? − 300℃ !? さすがに − 300℃ではないですね。
それでは、答えを発表しましょう。ボコボコと沸騰している時の液体窒素は約 − 196℃です。皆さんの比較的身近なところにあるドライアイスは約 − 79℃です、それより温度が高くなると二酸化炭素のガスになっちゃいます。 あとは毎日家で使っている冷蔵庫の冷凍室がおよそ − 20℃ぐらいですから、液体窒素がかなり冷たいことがわかりますよね。液体窒素の温度に比べたら、ドライアイスでさえ熱いといえるかもしれませんね(笑)。
じゃあ、ちょっと豆知識を。さっき皆さんから − 300℃という予測がでましたが、 − 300℃は存在しないんです。じつは、温度は低い方に限界があります。最低の温度は − 273.15℃で、それ以下は存在しないんですね。
温度は物質の運動に関係しています。温度が高いということは、物質を作っている分子や原子が激しく運動している状態です。その運動が止まってしまった状態。それが − 273.15℃なんです。これを「絶対零度」といいます。
液体窒素に風船を入れてみると……
さて、液体窒素を使った実験を始めていきましょうか。一つ目は、風船を液体窒素の中に入れるとどうなるのかを実験します。
それでは実験の準備を……。おっと! 液体窒素を床にこぼしてしまいました。ちょっと演技がわざとらしかったですかね(笑)。今日は床が白いからちょっと見にくいかもしれませんが、液体窒素をこぼしても床は濡れていませんよね。なぜだと思いますか? それは文字通り液体窒素が窒素でできているからです。

私たちの周りにある空気は、窒素や酸素などで構成されていることは知っていますよね。それぞれがどれぐらいの割合で存在しているかというと、窒素が80%、酸素が20%なんていわれますが、もう少し正確にいうと窒素が78%、酸素が21%です。
ん? 足しても99%で1%足りないですよね? 窒素と酸素の他に何があるか知っていますか? そう、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素もありますよね。でも、二酸化炭素は4番目に多いガスで0.04%ほどです。
じつは、3番目に多いのはアルゴンという気体で、これが約1パーセント含まれているんです。あまり聞いたことがない名前かもしれませんね。これは非常に安定したガスでほとんど化学反応しないため、長い間、誰もその存在に気がつきませんでした。なんと、アルゴンを発見した人はノーベル賞を受賞したんですよ。
液体窒素は空気にもたくさん含まれる窒素を冷やして液体にしたものです。ブクブク沸騰して − 196℃になっています。いま部屋の室温が25℃ぐらいですから、床にこぼした液体窒素は温められてすぐに蒸発して、空気の中に混ざって消えてしまったんですね。
実験に戻りましょう。まずは、バルーンアートで使われる風船を膨らませて、液体窒素の中に入れるとどうなるでしょうか? 割れる? 小さくなる? えっ、溶ける!? いろいろな意見が出ていますが、さてどうなるでしょうか。さっそく風船を液体窒素の中に入れてみましょう。あっ、〝バン〟と割れる音が嫌いな人は耳を塞いでいた方が良いかもしれません(笑)。
風船はどうなったでしょうか。割れたり溶けたりはしませんが、小さくしぼんだような形になりましたね。さらに、液体窒素から風船を出して、しばらくしたら元の形に戻りました。不思議ですね~。別にポンプで空気を出し入れしているわけじゃありませんよ。

なぜこのようになるのか考えてみましょうか。膨らんだ風船の中には空気が入っていますよね。それを冷たい液体窒素の中に入れたわけですから、風船の中の空気の温度が下がります。温度が下がると、空気を作っている窒素や酸素の運動が、ゆっくりになります。
風船が膨らんでいるのは、窒素や酸素が風船の内側に勢い良くぶつかっているからなんです。温度が下がるとぶつかる勢いが弱くなって、風船は小さくしぼんじゃうわけですね。
風船の中の空気が温まればまた運動が激しくなりますから元に戻ります。そうそう、風船に傷がついていたりすると割れることもあります。皆さんに耳を塞いでもらったのは念のためでした(笑)。
液体窒素を入れた空き缶につくしずくの正体
次の実験では、空き缶の中に液体窒素を入れてみましょう。誰か実験に参加したい人はいますか? 科学の発展のためなら自分は犠牲になってもいいという人! もちろん冗談ですが(笑)。
私が液体窒素の入った空き缶を持っていますから、少し離して真下に手を入れてみてください。どうですか、何か感じますか? しずくがポトンと手にあたった? じゃあ、そのしずくの正体は何だと思いますか? 空き缶の周りについた霜が融けた水だと思いますか? たしかに、雨粒が手にあたったように感じるかもしれません。でも、ちょっとだけヒリっとしません?

残念ながら水ではないですよ。だって、液体窒素を入れた空き缶の表面温度は、 − 196℃に近いんですよ。もし水だったら0℃で凍りますから、空き缶についた霜は融けません。
このしずくの正体は、空気の中に存在する酸素と窒素なんです。先ほどもお話ししたように、空気中には約20%の酸素が含まれています。純粋な酸素は − 183℃以下で液体になります。 − 196℃の液体窒素に冷やされて缶の周りの酸素がしずくのようになったんですね。
酸素が液体になるときに一緒にいる窒素も少し液体になりますから、この実験では、液体になった空気を触ったといってもいいかもしれませんね。かなり冷たい液体ですから、ヒリっとします。すぐに蒸発しますけどね。
液体窒素で冷やしたゴムボールをたたくとどうなる?
さて、最後の実験です。ここに、よく子どもが遊ぶような柔らかいゴムボールがあります。液体窒素に入れたゴムボールはどうなると思いますか? 科学は予想が大事ですよ。風船みたいにしぼむ? 今度こそ割れる? じゃあ、耳を塞ぎましょうか(笑)。
液体窒素から出したゴムボールは固くなっているような感じがしますね。ちょびっと凹んでますかね。でも、風船みたいにしぼんだ感じじゃないですね。さっきまでは柔らかくて弾むボールでしたが、机にぶつけると……。〝カンカン〟と音がしますね。まるで、プラスチックでできたボールみたいです。これは、ゴムを作っている長い分子が絡まったまま冷やされて固まった状態なんですね。伸び縮みできなくなってガチガチになっています。
ちょっと金づちでボールをたたいてみましょうか。でも、ゴムでできているから、たたいても割れるようなことはない気もしますが……。あっ、今度はほんとに耳を塞いだ方が良いかもしれませんよ(笑)。
おーっ、〝バリン〟っと音がして割れましたね。まるでボールがガラスでできていたかのようにばらばらに砕け散りました。この砕け散った破片もしばらくすると柔らかいゴムの素材に戻ります。面白いですよね。

今回の実験では、冷たい液体空気のしずくを触ってもらったりしましたが、予め実験をして、安全であることを確かめて体験してもらっています。
− 196℃の液体窒素や液体空気は取り扱いを間違ってしまうと大けがや大事故に繋がります。たとえば、手袋をした状態で液体窒素に触ってしまうと液体窒素が浸透してしまい手袋が外せなくなるような大変な事態になります。また、締め切った部屋で実験をすると、蒸発した液体窒素で酸素が薄くなって呼吸困難に陥るようなことも起こりうるんです。
ですから、今回の実験は残念ながらお家ではできません。もし、体験したければ専門家の指導の下で。もしくは、ドクターアキヤマの実験教室に参加いただければ体験できますよ! 「ちょー冷たい世界」には、まだまだ、不思議なことがいっぱいです。また近いうちに、「ちょー冷たい世界」の続編をやりましょう!
取材協力:東海大学付属相模高等学校中等部の皆さん

ドクターアキヤマ(本名:秋山泰伸) 1966年福岡県生まれ。九州大学大学院理学研究科博士前期課程修了。博士(工学)。九州大学助手を経て、現在は東海大学工学部学部長補佐。計算機マニアとして知られているほか、神奈川県内を中心に、主に小中高生を対象とした科学実験教室を開催している。テレビ、ラジオ、新聞などマスメディアやSNSに多数登場。著書に『愛しの昭和の計算道具』(東海教育研究所)。
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