【連載】今日もサメ日和◎沼口麻子——第15回/サメサメ・サメ博物館のオープン初月を振り返る

第15回 サメサメ・サメ博物館のオープン初月を振り返る

 令和8年8月8日にサメサメ・サメ博物館がオープンしてから1ヵ月が経った。実習生4名とボランティアスタッフ3名が運営をサポートしてくれたお陰で、ここまで大きなトラブルもなく博物館を運営することができている。 

 新米館長である私も体調を崩すことなく、夏を乗り切った。サメサメ・サメ博物館を開館するという目標は無事に達成されたのだ。たくさんの人にサメの魅力を伝えたいとの思いでつくった博物館が、どのようなスタートを切ったのか。ここで令和8年8月の振り返りをしてみたい。

サメサメ・サメ博物館の利用状況

 まずは入館者数からみてみたい。8月の開館日数は17日間であった。大人101名、子ども(中学生以下)は35名、合計入館者数は136名だった(2歳以下4名、クラウドファンディング招待者15名を含む)。 

 当初の私の予想では、知り合いが大半を占めると考えていたが、実際には来館者の8割ほどは面識のない方々であった。何人かの知り合いからは「落ち着いたら遊びに行く」との連絡があったので、気を遣って繁忙期の訪問を避けてくれたことがその要因の1つなのかもしれない。 

 では、面識のない方々がどのようにして、サメサメ・サメ博物館を探し当ててきたのか。自身のSNS以外ではほとんど広報活動をしていないため、どこで知ってもらえたのだろうかと疑問に思った。 

 来場者アンケートを集計したところ、東北地方にお住まいの方や、宮城県内や大崎市岩出山に親子で帰省中という方が多いことがわかった。祖母から聞いてきたとか、近所の噂で知った人も少なくなかったようである。どうやらサメサメ・サメ博物館のある岩出山は、SNSよりも口コミが力を発揮する地域のようだ。 

 また、「SNSでたまたま流れてきて見つけた」といった回答や「Googleマップで面白そうなところがないか探していて偶然に見つけた」、「サメが好きでクラウドファンディングで知った」といったものがあった。母校である東海大学海洋学部の1年生も来てくれて、「サメの研究がしたくて大学に入学した」という話を聞いたときは、嬉しくなった。 

 サメサメ・サメ博物館のウリの1つである、子どもから大人まで誰でも参加できる体験型プログラムもなかなかの滑り出しだ。解剖実習5名、標本作り2名、オリジナルトートバッグのハンコ体験は7名で、有料体験の申し込みは合計14名であった。これは入館者の10%以上が有料体験をしたということになる。 

 解剖実習5名はお盆期間の申し込みだったことから、夏休みの自由研究としての需要であるとわかった。お盆期間に解剖実習の申し込みをしてくれた中学生は、「博物館に来たことがきっかけでサメがとても面白い生き物とわかったので、夏休みの自由研究のテーマをサメに変えることにした」と嬉しそうに話してくれた。 

気になる来館者の評価は?

 先ほども少し触れたが、多くの方がアンケートに答えてくれた。来場者136名のうち、アンケート回答者数は54名であり、アンケートの回答率は40%であった。これらアンケート結果によれば、サメサメ・サメ博物館の良いところは次の3つだ。 

 1つ目は、体験コーナーの多さだった。ネコザメのミイラにタッチしたり、サメ肌を顕微鏡で観察したり、サメの脊椎骨でオセロゲームをしたり。とても小さい施設ながら、ほとんどの来館者の滞在時間は1時間を超えていた。 

 こだわって作った引き出し展示は、全部で25個の引き出しで構成されているので、一度ではなかなか観終わることができず、「また来ます!」とリピーター宣言してくれる人も少なくなかった。 

本物のサメの尾鰭を使った尾鰭パズル体験

 常設している本物の尾鰭の標本を使ってパズルをするコーナーも人気だったようだ。私が面白いと思ったのは、尾鰭を手にした人がこぞって尾鰭の切り口の匂いを嗅ぐことだ。検索すればどんな情報も出てくるこの時代に、最後まで価値があるのはこのような「体験」だけなのかもしれない。 

 五感を使って体感する展示をもっともっと増やすこと、既存の展示を教育プログラムとして完成させること。年内に力を入れていくべきはここであると確信した。 

 サメサメ・サメ博物館の良いところ2つ目は、「スタッフから詳しい解説が直接聞けて、標本の見方が変わった、理解が深まった」というものだった。一日の平均入館者数は8名だったので、話がしやすい環境であったことは運営側としても嬉しかった。サポートスタッフがいるときは私を含め最大6名体制だったので、入館者のほぼ全員と会話できたと思う。 

 研修生の目的は、博物館での接客や解説のスキルをサメサメ・サメ博物館で体験的に学ぶことである。未就学児への対応に不安があった研修生も、一緒にサメの絵を描くことでさまざまなコミュニケーションの形があることを学び、自信に繋がったという。 

 また、サメの解説を突き詰めたいという研修生は、教科書どおりの硬い解説をしたときと、自身の経験や問いを交えながら解説したときで、お客様の反応があからさまに変わったことに驚いたという。お客様自身が考え、感じ取るきっかけを作ることができたのは彼女の大きな成長に繋がったに違いない。 

 そして、良いところ3つ目は圧倒的な数のサメ標本があるということだった。息子がサメ好きだという親子は、「今までいろんな博物館や水族館に行ったが、これほど多くの標本は見たことがなく、満足した」という。他の来館者は、「骨格標本を観察しながら、尖っていない、むしろ丸みを帯びたサメやエイの歯の形にびっくりした」と感想を書いてくれた。

 アンケートには、「サメのイメージが変わりましたか?」という欄があるのだが、変わったと回答した人が42名、変わらないと回答した人が9名、回答なしが3名だった。つまり、アンケートに回答した人のうち、入館前と後で78%がサメのイメージが変わったという結果になった。 

 サメの多様性と絶滅危惧種の多さに驚かされ、イメージが変わったと書いた人が多かった。一方で、変わらないと回答した人のアンケートには、もともとサメが大好きだったので、イメージ自体は変わらなかったが、もっともっと知りたくなったという感想も添えられていた。 

 また、このアンケートでもう1つ明らかになったことがある。コアなサメマニアというよりも、サメにはあまり詳しくないが、面白そうだったので訪れてみたというライト層が圧倒的に多かったということだ。 

 これはまさに、私が求めている来場者だ。ひとりでも多くの人にサメの魅力を伝えたい。どうやら、博物館の方向性は間違っていないようなので、これからは、サメの大切さを科学的に問いかける展示を増やし、サメの保全について具体的に考え、行動するプロセスを丁寧に作り上げていくことが課題だと認識した。 

サメカフェも好調な滑り出し

 博物館に併設している「サメカフェ」は、開館日17日間のうち、カフェ利用で稼働したのは12日間であった。8月のカフェ利用日数における1日の平均売り上げは約3300円だ。 

 1番人気はシャークナゲット。2番がサメグラスのスパークリング紅茶、3番が紅茶ゼリー(各500円)だった。シャークナゲットは年齢問わず、サメを気軽に美味しく食べられるので、人気なのは予想どおりであった。 

 2番目のスパークリング紅茶が人気だった要因は、ワイングラスの中にいるガラスのサメが魅力的だからだろう。そのサメの背鰭の先がちょっとだけ出るように調整しながら紅茶を注ぐのが私のこだわりだ。 

新たなカフェメニュー。岩出山のパン屋「ひとつぶ堂」さんの絶品スコーン。9月はラムレーズン味

 館内でお土産を買うことができる「サメミューショップ」での1番人気はステッカーだった。次は博物館オリジナルキーホルダー、ついで博物館オリジナルトートバッグだ。いずれも1000円以下の商品なので、小学生がお小遣いで買いやすい価格帯が好まれることがわかった。 

新商品の眠り猫ブレンド 

 また、9月からは新商品として、「眠り猫ブレンド」というドリップコーヒーを発売した。館内に入ると最初に目に入る展示「眠り猫」がパッケージのモチーフとなっている。「眠り猫」とはネコザメのミイラである。まるで飼い猫がウトウトと眠っているような穏やかな表情をしているので、私がそう名付けた。 

 持ち上げるとずっしりしていて、筋肉も内臓もそのままであることがわかる。このサイズだと成熟したメスの可能性もあるので、お腹の中に卵も入ったままなのかもしれない。触ってみると表面のサメ肌はザラザラゴツゴツであるが、完全に乾燥しているので鰹節のようにカッチコチに硬い。これは、東海大学名誉教授の田中彰先生からサメサメ・サメ博物館に寄贈してもらったものだ。 

 教授のデスクの横に長らく鎮座していたネコザメなので、私にとっては崇高なものである。卒業から20年以上経ち、私が受け継ぐことになろうとは。大学時代は〝彼女〟のことを「偶発ネコザメ」と呼んでいた。なぜならこのネコザメのミイラは、偶発的な産物で、つまり、どうやってできたか誰にもわからないからだ。いつの日か、研究室の片隅でミイラになって発見されたと語り継がれていた。

 想像するに、たまたま誰にも気付かれずに数十年間放置され、奇跡的に腐らずに乾燥し、これまた奇跡的に飼い猫のような形で発見されたということか。色々謎であるが、意図的には作ることができないことは確かだろう。 

 今日も今日とてサメ日和。よろシャーク。 

サメサメ会議2026シンポジウムの募集がはじまりました。全国のサメ好きの皆様、よろシャーク!  
https://www.samemu.org/symposium/

シャークジャーナリスト沼口麻子の「サメサメ倶楽部」  https://lounge.dmm.com/detail/645
サメが好きな人が集まり、サメについて学び、サメの魅力を世の中に広めて行こうというコミュニティです。

沼口麻子

ぬまぐち・あさこ 1980年生まれ。東海大学海洋学部を卒業後、同大学院海洋学研究科水産学専攻修士課程修了。在学中は小笠原諸島周辺海域におけるサメ相調査とその寄生虫(Cestoda条虫綱)の出現調査を行う。現在は、世界で唯一の「シャークジャーナリスト」として、世界中のサメを取材し、その魅力をメディアなどで発信している。著書に『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)、『ホホジロザメ』(福音館の科学シリーズ)。

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