第8回 宝くじの袋
江戸後期の天保年間に老中・水野忠邦が進めた幕政改革によって1842年に廃止された政府公認の富くじが復活したのは、103年後の昭和20年だった。この年の4月、戦費調達を目的に臨時資金調整法が改正され、7月から政府くじの「奨金附勝札」が日本勧業銀行(現・みずほ銀行)より発売された。勝札は1枚10円で1等の当選金は10万円だった。しかし、8月25日の抽選日を迎える前に敗戦したため、抽選を待っていた人々は、これでは勝札ではなく負け札だと顔を見合わせたという話が語り伝えられている。
敗戦後の政府くじは、国の復興の資金を得るために「宝くじ」の名前で発売されることになった。昭和20年10月に発売された第1回宝くじは、戦時中の勝札と同じ1枚10円で1等額も同じ10万円だった。今の宝くじに関する法律である当せん金付証票法は、昭和23年に公布され、収益を地方財政の資金にしていく目的が条文化された。現在も全国都道府県と20指定都市で、宝くじの販売と収益金の事業運用が続けられている。
今ではもう、日本の富くじの復活が、かつての戦争中の出来事だったことを知る人は少ないだろう。年の瀬の町で宝くじ売り場に人々が並ぶ姿は、風物詩の光景になった。
〔参考文献〕
第一勧業銀行宝くじ部編『夢は世につれ… 宝くじ30年のあゆみ』(第一勧業銀行、1975年)
【上ヶ島さんの宝くじコレクション】
上ヶ島オサムさんのコレクションから昭和20~28年の宝くじ券を紹介します。秘蔵のコレクションをお楽しみ下さい。皆様にも幸運が訪れますように!(画像をクリックすると拡大表示されます)
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かみがしま・おさむ 紙物収集家。1957年北海道生まれ。東海大学工学部卒。著書に『レトロ包装シール・コレクション』(グラフィック社)、『絵はがきのなかの札幌』(北海道新聞社)、『さっぽろ燐寸ラベルグラフィティー』(亜璃西社)などがある。