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【フォトエッセイ】日本の包み紙 Collection◎上ヶ島オサム――第12回/野菜の種袋

第12回 野菜の種袋

 天候によって作柄が変動しやすく保存性も乏しい野菜は、供給量の変動に伴って価格も大幅に変動する。昨年から今年にかけて家計を直撃した野菜の価格高騰は、大きな話題になった。

 日本では、南北に長い列島の特性を活用した産地リレーによって、野菜の安定供給が図られているという。国の野菜価格安定制度は、昭和41(1966)年に制定された野菜生産出荷安定法に基づいて、主要な野菜の生産・出荷を調整して安定を図ることを目的にしている。計画生産・計画出荷の対象の指定野菜は、国民生活上重要な14品目(キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ピーマン、レタス、たまねぎ、ばれいしょ、ほうれんそう)である。来年は、ブロッコリーがこの指定野菜の仲間入りをする。

 ここに紹介した種袋は、戦前から戦後にかけてのものとなる。人にとって激動の時代だったこの当時は、野菜にとっても同様だった。築地の中央卸売市場は戦時中、市場の機能を停止して配給施設になり、戦後になると、施設の四分の一が進駐軍に接収された。

 庶民の台所を支える市場の機能が息を吹き返したのは、生鮮食料品の統制が全面的に解除された昭和25(1950)年頃だったという。進駐軍の施設接収が解かれたのは昭和30年だった。

〔参考文献〕
「野菜をめぐる情勢(令和6年12月)」『農林水産省ホームページ』(2024年12月)https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/yasai/attach/pdf/index-86.pdf
「中央卸売市場の沿革」『東京都中央卸売市場ホームページ』(2024年9月)https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/organization/about/enkaku

【上ヶ島さんの種袋コレクション】

 上ヶ島オサムさんのコレクションから秘蔵の野菜の種袋たちを紹介します。お楽しみください(画像をクリックすると拡大表示されます)

※全ての画像の無断転載を禁じます

大和西瓜
中生山茄子
金沢節成胡瓜
雪白体菜(シヤクシナ)
天王寺蕪
大長苦瓜
泉州黄玉葱
トマト.ポンテローザ
白首宮重大根
縮緬南瓜
獅子大蕃椒
朝鮮白菜
雪白二貫目体菜
野沢菜
早太り花知らず
時無大根
上ヶ島オサム

かみがしま・おさむ 紙物収集家。1957年北海道生まれ。東海大学工学部卒。著書に『レトロ包装シール・コレクション』(グラフィック社)、『絵はがきのなかの札幌』(北海道新聞社)、『さっぽろ燐寸ラベルグラフィティー』(亜璃西社)などがある。