月刊『望星』は2024年11月から『web望星』として再スタートを切りました。

【連載】トイレ事情を歩く◎石川未紀(世界共通トイレをめざす会) 第1回/外出先のトイレで困った経験はありませんか? 

第1回 外出先のトイレで困った経験はありませんか? 

 私は、若い頃、きれいな水洗トイレが期待できない場所だとわかっていても、そのことで外出をためらったり、やめたりすることなんてありませんでした。 
 行きたい、出かけたい、という気持ちのほうがずっと大きかったから――。ちょっと不自由があったとしても、トイレなんて、ほんの一時我慢すればいいこと。何なら便座がなくても、「それなりに」乗り越えてきました。 

 ところが――。 
 子どもが生まれ、その感情は一変。さらに二人目の子どもは医療的ケア、全盲、知的障害を併せ持つ重度重複障害児だったこともあり「トイレが心配だから、〇〇はやめておこう」が増えていきました。 

 以来、成長過程によって違いはあっても、横になれるベッドがないところはNG。トイレが清潔でないところはNG。和式のみはNG。二人で入れないトイレはNG。と、トイレが理由で選択肢はどんどん狭まっていきました。 

 子どもにたくさんのことを経験させたい! 
 私も子どもを連れて外出も旅行もしたい! 
 でも、汚いトイレはいやだし、使えないトイレではそもそも外出できない! 

という感情と事情のせめぎ合い。 
 そして、心の中で叫ぶ。 
 日本はトイレ先進国じゃなかったの!? 

 ふと、見回すとトイレで困っている人はたくさんいました。 
 車いす使用者の方、体に不自由がある高齢者の方、異性介護の方、知的障害の方とその介助者の方、内部障害の方、視覚障害の方、乳幼児連れの方などなど、悩みどころはそれぞれ違うけれど、「トイレは事前にチェックしてから出かける」という人が多くいました。 

 そもそも、近ごろのトイレが難しい。入ったらいきなり便座のフタが開いたりしまったり。突然、水が流れたり。 
 この間は、間接照明のおしゃれなトイレに入ったら、文字が小さすぎて、流すボタンと温水洗浄のボタンの区別がつかず、しかたなく、カバンから老眼鏡を出して確かめる始末。 

 いや、笑い話ではなく……。アンケートでも、個室内で困ったことの一つに「流すボタンがどこにあるのかわからない」という回答もかなりあったのです! 
 知的障害の方や視覚障害の方、外国人の方なども迷ったことはきっとあるはず。 
 トイレ個室内はプライベート空間。個人の性格や国による文化の違いはあったとして、個室内から、助けを呼ぶのは結構な勇気がいると思います。 

 でも、空港、鉄道駅、パーキングエリアや公共性の高い場所のトイレが、清潔でシンプルな共通仕様のトイレであることが保障されていたら? 
 少しは事前準備も楽になり、少しは軽い気持ちで出かけられるのではないでしょうか。 

 トイレのせいでお出かけしづらいなんていやだ! 

「世界共通トイレをめざす会」では、清潔でシンプルな共通仕様のトイレをめざしています。 
 そして、トイレの困りごとや、こんなトイレがあったらいいなというアイデア、ただいま大募集中です。 

 ご意見をどうぞよろしくお願い申し上げます! 

「世界共通トイレをめざす会」で独自にとったアンケート結果

ほとんどの人が、外出先のトイレで困った経験が!
トイレが気がかりで外出を控えたり、がまんしたりした経験がある人は約三人に二人。この数字をどう見る
便座の「フタ」はあるのに、なぜか便座がないトイレ。
(フランス・世界的観光地のトイレ) 
石川未紀

いしかわ・みき 出版社勤務を経て、フリーライター&編集者。社会福祉士。重度重複障害がある次女との外出を妨げるトイレの悩みを解消したい。また、障害の有無にかかわらず、すべての人がトイレのために外出をためらわない社会の実現をめざして、2023年「世界共通トイレをめざす会」を一人で立ち上げる。現在、協力してくれる仲間とともに、年間100以上のトイレをめぐり、世界のトイレを調査中。