第21回/トイレについて語る場を! 使い手のモラルを考える その2
前回、大宮駅で、団体旅行者がバリアフリートイレを「占拠」していた話を掲載したところ、「中学生が集団で使っていた」「コンサート会場で同じような光景を見た」というメッセージをいただきました。私もスポーツイベント会場で、10人ほどの小学生がバリアフリートイレに入っているのを見たことがあります。
仲良しの「連れしょん」気分で悪気はないのでしょうが、やはりこれはNGでしょう。

バリアフリートイレをわかりやすい場所に設置しているところも多くあります。ある駅では改札を入ると正面にあります。ある商業施設では一階フロアには一般トイレを設置していませんが、バリアフリートイレだけは設置してあります。これは、施設側の「温かい配慮」と受け取れます。
しかし、動線が単純でわかりやすいことが災いしてか、目についたからと旅行者などが「占拠」するケースを見かけます。また障害のある次女と入ろうとした際、便座が上がったままで周囲が汚れているバリアフリートイレに何度も出くわしたことがあります。
これは、おそらく男性が「ちょっと拝借」と軽い気持ちで使ったのか?と思わざるを得ません。せめて使用後は、周囲をきれいにし、最低でも便座はもとに戻しておくのがマナーでしょ!と心の中で毎度、毒づいてしまいます。


便座は上がったまま、ベビーシートは開きっぱなし。ほんの些細なことでも車いすユーザーにとっては難儀。汚れを拭きとることができない人も。これでは設備が整ったトイレも台無しに
バリアフリートイレを、「広くて気持ちがいい」「設備が整っている」「周りを気にしなくていい」「空いている」といった理由で使う人がいるかもしれませんが、ちょっとだけ、考えてみてください。バリアフリートイレは、犯罪などに使われてしまうというリスクもあります。設置義務がある施設は相当のリスクを負っているのです。設置には当然かなりのスペーズが必要ですし、費用もかかります。もちろんランニングコストも。そのようなトイレであるにもかかわらず、多くは無料で開放されています。
こうした状況は「日本のトイレ事情はすばらしい」で片づけられやすいのですが、マナーなどを無視した使われ方を目にすると、私だったら「使える人を限定する」という厳しいルールを敷きたくなります。


こちらは一般トイレだが、なぜ、このような経緯に至ったのか‥‥‥。左はコンビニ、右は公園トイレの張り紙
しかし「使える人を限定する」というルールにしてしまうと、外見からは排泄に困難を抱えていると分からない人が、バリアフリートイレの利用をためらってしまい、外出そのものを控える事態になりかねません。安易な線引きは、利用できる人とできない人の間で、気持ちの上での分断を招きかねません。
トイレの使い方や優先順位をめぐっては、まず排泄に困難を抱えている人の話を聞き、意見交換するなど、より多くの人がトイレの使い方について考える「場」があったほうがいい。これはバリアフリートイレだけでなく、一般トイレにおいても同じだと思います。トイレという密室の利用では、自分の常識が世間の常識となっているのか? そのすり合わせをする機会が必要です。
これは私自身の体験です。「家のトイレは洋式、外のトイレは和式」という時代に育ち、幼稚園の頃は和式トイレの流すレバーは足で押すと教わりました。幼児にはレバーが固かったからかもしれません。しかし、ずっとそれを信じて足で押していたら、ある日、和式トイレの個室に「流すレバーは手で押してください!」という注意書きが‥‥‥。
なんと、これまでの行為をどう懺悔したらいいのか!と周囲に告白したところ、「私も足で」と言う人もいれば、「足で流してください」と書いてあったと言う人もいました。トイレの話をタブー視せずに語り合うことは、衛生上の観点からも必要ではないでしょうか。
提供側の努力だけに任せるのではなく、私たちが「共通のマナー」を作り上げて、認知していくことも大切だと考えます。
それはできると思っています。
かつて個室ごとに並んでいたトイレの列は、いまや離れた場所から一列に並ぶのが主流です。入っている人に不要なプレッシャーがかからず、公平に順番が回ってくる。これは多くの人の経験をもとに作り上げた「共通認識としてのマナー」と言えるでしょう。
最近、SNSやテレビでもトイレについて取り上げられることが増えている気がします。とても画期的なこと! 「共通認識」を形成していくチャンスです。

ジェンダーフリートイレが設置されるなどトイレの形はどんどん変化しています。そこでどのようなマナーを共有すれば、すべての人が気持ちよく使用できるのか? 大いに議論すべき時ではないでしょうか。

いしかわ・みき 出版社勤務を経て、フリーライター&編集者。社会福祉士。重度重複障害がある次女との外出を妨げるトイレの悩みを解消したい。また、障害の有無にかかわらず、すべての人がトイレのために外出をためらわない社会の実現をめざして、2023年「世界共通トイレをめざす会」を一人で立ち上げる。現在、協力してくれる仲間とともに、年間100以上のトイレをめぐり、世界のトイレを調査中。 著書に『私たちは動物とどう向き合えばいいのか』(論創社)。

