【フォトエッセイ】星空をめぐる旅、そして物語◎永田美絵——第17回/春分の日から一年は始まる

第17回 春分の日から一年は始まる

 春分の日というと、みなさんはどんなことを想像しますか? 
「国民の祝日で、自然をたたえ、生物をいつくしむ日」 
「昼と夜の長さが同じ日」 
「お彼岸のころでお墓参りに行く日」 

 そもそも3月20日だったり21日だったりするのはなぜなのでしょう。 
 ちなみに2026年の春分の日は3月20日、2027年は3月21日、2028年から2030年までは3月20日です。 
 めんどうなので3月20日に統一してしまえばいいと思われるかもしれませんが、実はそれはできません。 
 春分の日は、昔からとても大切な日なのです。 

 お話は今から数千年前にさかのぼります。 
 古代バビロニアの人々は夜空を見上げ、太陽の通り道である黄道と天の赤道の交点を春分点、秋分点と名づけました。 
 春分の日は太陽が天の赤道上である春分点に位置した日で、この日の太陽は真東からのぼり真西に沈みます。 
 ですから昼と夜の長さが同じ日と言われるのですが、実は春分の日や秋分の日は昼と夜の長さが同じではありません。 

 それは日の出と日の入りの定義のためです。 
 日の出とは太陽が地平線から見えた瞬間とされています。それに対して日の入りは太陽が地平線にすべて沈んだ瞬間。太陽の視直径分の時間がかかるため春分の日は昼の長さが少し長いのです。 

 さて、お話を戻します。 
 黄道上の星を結んで作った十二星座が、最初にできた星座です。 
 暦づくりの目印として作られたのですが、当時一年の出発点は太陽が春分点に位置した日、つまり春分の日でした。 
 春分点から太陽が黄道上をめぐり、もとの春分点に戻るまでが一年。一年は365日ですが、正確には365日と6時間足らずです。 
 このずれの補正のためうるう年を入れるのですが、このずれのため春分の日は3月20日になったり21日になったりするのです。 

 春分点は一年のスタートを教えてくれる大切な日。現在のカレンダーでは一年のスタートは一月ですが、昔は三月からスタートし、二月が一年最後の月だったので日数が半端なのです。 

 春分の日を過ぎると太陽は徐々に南中高度を上げ、昼の時間が長くなっていきます。古代の人々にとっては、温かくなり草花が咲き、農作物が実る春は待ち遠しい季節だったに違いありません。 
 寒さも和らぎ、春の星座ものぼってきますので、みなさんもぜひ夜空を見上げてみてくださいね。 

春分の日、地球から見る太陽は、地球の公転軌道面(黄道面)と赤道面が交差する線上の「春分点」の方向にある(Ⓒ国立天文台) 
永田 美絵

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら

バックナンバー

バックナンバー一覧へ