【連載】ドクターアキヤマの科学教室◎第10回/水に浮かぶ魔法の金属!? 

〝科学って不思議で、ちょー楽しい‼〟。神奈川県内を中心に科学実験教室やサイエンスショーを行い、小中高生から大人気の「ドクターアキヤマ」こと東海大学工学部の秋山泰伸先生。楽しくて面白い、人気の科学教室のエッセンスをご紹介します。お家でもできる簡単なものばかりなので、ぜひ実験してみてください。

第10回/水に浮かぶ魔法の金属!?

 ドクターアキヤマの科学教室へようこそ! 今回は、1円玉を使ってちょっとしたゲームをやってみようかと思います。使う道具は、なんと水を入れたボウルと1円玉だけです。今日は特別におまけも用意していますけどね(笑)。 

 ゲームを始める前に、まずは基礎知識を確認しておきましょう。1円玉は何でできているか知っていますか? そう、アルミニウムという金属ですよね。では、金属って水に浮くと思いますか? 重いから浮かない? でも、金属でできた船は浮かんでいますよね。 

 いったいなぜでしょうか? 船はボウルやお椀みたいな形をしていて、中に空気を含んでいますよね。そのため、船全体の体積に対して平均的な密度が小さくなり、水から受ける浮力によって浮くことができるんです。空気って、水よりすごく軽いでしょ。〝空気+船の金属〟を合わせた船全体の平均密度は、水より小さいんです。

 さて、1円玉にはちょっとデザインが彫られていますが、船とは違って平らな円板ですね。すると、1円玉は水に浮かばないような気がしますよね。

1円玉を水に浮かべてみよう

 ゲームを始めましょう! これからグループごとに1円玉20枚を渡します。その1円玉を使って、30秒のあいだに〝いくつ水に浮かせられるか〟を競います。準備するものも、ゲームの内容も、とってもシンプルですね。あっ、もし誰も1円玉を水に浮かべることができなかったらゲームは成立しませんので、その場合は引き分けです(笑)。
 
 それでは、この道35年のドクターアキヤマがお手本を見せたいと思います。呼吸を整え、神経を集中させて、水の上にそっと置いてみると……。ほら、1円玉は水に浮くんですよ。不思議ですよねー。その理由は、また後ほど解説します。 
 
 じゃあ、皆さんもやってみましょうか。まずはボウルの4分の3ぐらいのところまで水を入れてください。特に量が決まっているわけではありませんが、水が少ないと実験しにくいと思います。 
 
 水を入れたら、さっそく1円玉を浮かせてみましょう。どうですか? 1円玉は浮きましたか? おー、ちゃんと1円玉が浮いている人がいますね。でも、失敗している人のほうが多そうですね。 

 思っていたよりも難しいんじゃないですか? みんなまだまだ修行が足りないですね(笑)。心を落ち着かせて、静かに1円玉を置くのがコツですよ。何回か練習して慣れたら、1円玉を浮かせられるようになります。 

 それではゲームを始めていきましょう。これから30秒間、計ります。そのあいだに一番多くの1円玉を水に浮かせることができるのは誰かな? よーい、スタート! 

 静かに、慎重に1円玉を置いてくださいね。おー、浮いていますね。見回してみると3~5枚くらい浮いている人が多そうですね。一番多いのは……、16枚を浮かべている人がいますね。おめでとう、優勝です! では、優勝者には、ドクターアキヤマのオリジナルTシャツをプレゼントしたいと思います(笑)。 

表面張力のおかげで浮かんでいる? 

 では、なぜ1円玉が水に浮かぶのかを考えてみましょう。1円玉の材料であるアルミニウムは、水より密度が大きい金属だから、普通なら水に浮かばず、沈みそうですよね。なぜだと思いますか? おっ、「表面張力」ですか。なるほど、いい意見ですね。 

 表面張力とはどういうものかというと、水同士がくっつき合う力のことです。水滴が丸くなったり、コップの縁まで水を入れても、こぼれそうでこぼれなかったりするのは、この力が働いているからなんです。 

 水の分子が〝おしくらまんじゅう〟をしているとイメージしてください。えっ、おしくらまんじゅうがわからない!? そっかー、昭和生まれの世代にしかわからないかもしれませんね。ドクターアキヤマが子どもの頃によくやっていたのですが、寒い時期に何人かで互いに背中や尻、肩を押し合って行う遊びですね。 

 なぜ寒い日にやるかというと、みんなで体を押しつけ合うから温まるんですよ。体が空気に触れる部分が多いと寒いから、体を押しつけ合って、自然に円のようになるんです。ここでは円ですが、もしこれが立体的になるとしたら球のようになります。 

 表面張力の働きもこれに似ていて、水の分子が引っ張り合うことによって、水が空気と触れる部分をできるだけ小さく保とうとするんですね。おしくらまんじゅうは押すんですが、水は綱引きみたいに引っ張り合っています。だから、水滴が丸くなったり、コップからあふれそうな水があふれないような現象が起こるんです。球は、中の量(体積)に対して外気に触れる広さ(表面積)がもっとも小さい形なのです。

 今回のゲームで水に1円玉を浮かべると、1円玉は水の中に沈もうとしますよね。でも、水同士が引っ張り合う力が、1円玉の〝縁(円周)〟に働きます。これは、1円玉を引っ張り上げるような力になります。だから、今回のゲームで1円玉が水に浮いたのは表面張力によるということになりますが……。

 それだと、テストでは50点くらいしかあげられないかもしれません。私が学生たちに出すテストは普通60点以上で合格です(笑)。たしかに表面張力も働いているから、間違ってはいないけど、実は船が水に浮くときと同じように、浮力も重要な役割を果たしているのです。 

1円玉には浮力が働いている

 1円玉が水に浮かぶ理由が表面張力だけでないとしたら、他にどんな力が働いているのか考えてみましょう。 

 今回のゲームで使ったのは、水と1円玉です。水の密度を1とすると、アルミニウムの密度は約2.7になります。アルミニウムは、水より重いから普通に考えたら1円玉は沈むんです。でも沈まない。 

 水に浮いた1円玉をよく見てください。何か気づいた点はありますか? そう、わずかですが沈んでいるんです。でも、1円玉の上に水は載っていませんよね。1円玉の縁の水が曲がっています。まるで、コップからこぼれまいとする水のように。1円玉の周囲では水面がへこみ、1円玉の上面は周囲の水面より低い位置にあるのに、水ではなく空気が乗っかっていますよね。1円玉が浮かぶのは、表面張力も働いていますが、船と同じように浮力の影響が大きいのです。 

 1円玉の直径は20mm、厚さは1.5mm、重さは1gという区切りのよい数字です。表面張力を無視して、浮力のみで浮くためには……計算をしてみると、3.2mmぐらい沈めば浮きます! でも1円玉は1.5mmの厚さしかないので1.7mm足りません。沈んじゃいますよね。 

 ところが、1円玉の表面の状態によっては、水が広がりにくいことがあるんですよね。それに、水同士が引っ張り合う力で、1円玉の上の面が水の表面より沈んでも、簡単には水が1円玉の上に侵入しません。 

 1円玉以外のものでも検証してみましょうか。1円玉と同じ直径20mmのものや、より大きな直径50mm、100mmのもの、厚さは1.0mmのものと1.5mmのアルミニウムの円板が用意してあります。ちゃんと水に浮くでしょうか? 

 そうそう、1円玉と同じ直径20mm、厚さ1.5mmの円板ですが、表面のデザインがないぶん少し重いですよ。1円玉はデザインの分削られていますからね。これは1.3g近くありますから、難しいですよ。より深く沈んでもらわないと、浮力が足りません(笑)。

 ちょっと難しい話ですが、表面張力による力は、1円玉の縁に沿って働き、その一部が1円玉を上向きに支えています。たとえば、直径100mmのアルミの円板は、直径20mmのものと比べて、同じ厚さなら面積も重さも25倍になります。でも、円周は5倍しか増えていません。つまり、表面張力による力は5倍にしかならないのに、重さは25倍になっています。一方、同じ深さまで沈めば、浮力は25倍になるので、浮力の影響がより大きくなります。

 厚さが1.0mmのものは比較的簡単に浮かびましたね。でも、1.5mmのものって結構難しくないですか? しかし、ドクターアキヤマは、直径20mm、50mm、100mmのものも、厚さ1.0mm、1.5mmのものも、すべて浮かせることができます! すごいでしょ! 

 なんて自慢していたら、皆さんも成功していますね(笑)。いろいろ条件を変えて水に浮かぶかどうか実験してみると楽しいですよ。家でも簡単にできる実験ですから、ぜひいろいろ試してみてください。そうそう、5円玉や10円玉、100円玉を浮かべるのは難しいと思います。あと、一つだけ注意です。浮かせやすくしようと、お金を削っちゃだめですよ。法律違反になりますからね。

取材協力:東海大学付属相模高等学校中等部の皆さん

ドクターアキヤマ(東海大学工学部応用化学科教授)

ドクターアキヤマ(本名:秋山泰伸) 1966年福岡県生まれ。九州大学大学院理学研究科博士前期課程修了。博士(工学)。九州大学助手を経て、現在は東海大学工学部学部長補佐。計算機マニアとして知られているほか、神奈川県内を中心に、主に小中高生を対象とした科学実験教室を開催している。テレビ、ラジオ、新聞などマスメディアやSNSに多数登場。著書に『愛しの昭和の計算道具』(東海教育研究所)。

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