第25回/観光地のトイレ(排泄)マナーは大丈夫ですか?
先日、「深刻化する〝観光地の排泄問題〟」という衝撃的なネット記事を見つけました。それによると世界の観光地で「野外排泄(これは小だけとは限らない)」が問題になっているというのです。
遠い世界の話と思いきや、前々回、この連載で取り上げた鎌倉でも問題になっているとか! 鎌倉は何度も訪れている場所。一体どこで?と思ったのですが、記事では、神奈川県鎌倉市の江ノ島電鉄(以下、江ノ電)「鎌倉高校前」駅を取り上げていました。
同駅は、人気アニメ「スラムダンク」の「聖地」とされていて、世界中から人々が訪れているらしい。そこでさらにネットで検索すると、複数のメディアが「鎌倉高校前」の激変ぶりを報道しており、そこで「トイレ問題」にも触れていました。
2025年9月の「デジタルアエラ」には、鎌倉駅で、〝鎌倉高校前の駅にはトイレがないので、この駅で用をすませてください〟というアナウンスがされていて、4月時点であった鎌倉高校前の駅のトイレは、設備の破壊行為が繰り返しあったため閉鎖されている、という内容の記事が掲載されています。
江ノ電のホームページを見ると、トイレ設置駅は、藤沢駅・鵠沼駅・湘南海岸公園駅・江ノ島駅・腰越駅・七里ヶ浜駅・稲村ヶ崎駅・極楽寺駅・長谷駅・由比ヶ浜駅・和田塚駅・鎌倉駅の12駅。そのうち、藤沢駅・江ノ島駅・長谷駅・鎌倉駅には多目的トイレを設置、とあります。
「鎌倉高校前」駅の記載はありません。
行って確かめるしかない!
日曜の朝、鎌倉駅で、駅員さんに「鎌倉高校前の駅に、トイレはありますか?」と尋ねると「ある」とも「ない」とも言わずに、
「鎌倉駅や江ノ島駅のトイレをお勧めしています。あとは長谷駅などにもトイレがありますよ」という返答。
「前はあったような」と続けると、「外国人観光客の方が異物を流したり、荒らしたりして、今は……」と言葉を濁します。

どうやらトイレは存在しているらしい。

「鎌倉高校前」駅に到着。日曜の朝にもかかわらず、すでに多くの人が訪れていました。無人駅ですが、ホームを出ると正面にトイレ(男女各1)はありました。外から鍵がかけられるようになっていて、使用制限をしているのかもしれませんが、私が訪れた時は空いていました。きれいなトイレに慣れていると、多少ためらいは感じますが、使用するのに問題はなさそうです。
ちなみに「聖地」と言っても、駅周辺は住宅、病院、学校があり、地元の人たちが静かに暮らす街です。駅前にコンビニなどはなく、ほかに有名な観光スポットもないので、このあたりでの観光客の滞在時間は短いと思われます。
駅員のアナウンスにしたがって、「鎌倉高校前」駅に行く前に、利用できる駅のトイレで用を済ませておけば、特にトイレは必要ない場所でした。万が一、体調不良でトイレに駆け込むという場面があったとしても、駅にはトイレは存在していたので、野外排泄が必要な場面は想定しにくいと感じました。

さらに、駅前から坂上の高校や病院まで、茂みなどは存在せず、観光客がごった返す中で一体どのように「野外排泄」したのか、さらに疑問は深まりました。
急速に観光客が増えた場所では、トイレの数が追いつかない、というのなら、どこにいくつトイレを設置するか、その負担を誰が背負うかという課題はあったとしても、解決の糸口は見えます。
しかし、「トイレが足りない」というハード面ではなく「排泄に対する文化」の違いから、道端で排泄をしている人がいるとしたら、なかなか根が深い――。
鎌倉市内のトイレには「ゴミを流さないで」「砂を流さないで」「足を洗わないで」「ゴミは持ち帰って」という張り紙をよく見かけます。それぞれの「常識」の違いについて、つくづく考えさせられました。

たとえ、自分たちとは違う文化に戸惑うことはあったとしても、観光で訪れたのなら、そこで暮らす人たちやその文化に対して敬意を払うのは、世界共通のマナーですね。

いしかわ・みき 出版社勤務を経て、フリーライター&編集者。社会福祉士。重度重複障害がある次女との外出を妨げるトイレの悩みを解消したい。また、障害の有無にかかわらず、すべての人がトイレのために外出をためらわない社会の実現をめざして、2023年「世界共通トイレをめざす会」を一人で立ち上げる。現在、協力してくれる仲間とともに、年間100以上のトイレをめぐり、世界のトイレを調査中。 著書に『私たちは動物とどう向き合えばいいのか』(論創社)。

