【連載】トイレ事情を歩く◎石川未紀(世界共通トイレをめざす会) 第23回 /観光地の有料トイレは「あり」ですか?

第23回/観光地の有料トイレは「あり」ですか?

 観光地などを巡ると、日本のトイレはつくづく素晴らしいと感じます。完璧とまでは言えなくても、バリアフリートイレを併設するところも増えていますし、清潔で、備品もそろっています。一方で、地元住民や自治体の過度な負担の上に成り立っているのではないかと心配になることもあります。 

 奈良と鎌倉のトイレを見てきました。この二つの観光地は、史跡や歴史的建造物など見どころが数多くありますが、大型商業施設がほとんどないという共通点があります。このようなところではトイレ難民になりやすいのですが、想像以上に「おもてなしのトイレ」が充実していました。 
 まずは、奈良のトイレ――。 
 近鉄奈良駅には、観光マップならぬ「トイレマップ」がありました。奈良市観光協会が発行している「奈良公園ウォークマップ」には民間施設のトイレ一覧も紹介されています。 

HPでもトイレ情報を公開していて、至れり尽くせり

 東大寺の拝観入口脇には、なかなか洒落た外観のトイレがあります。 

左 観光客でにぎわう東大寺 
右 雰囲気と調和した東大寺のトイレ外観 

 法隆寺の門前には「法隆寺iセンター」があり、そこでトイレ(バリアフリートイレもあり)を借りることができます。 

法隆寺の有料エリア内には3ヵ所のトイレがありました。周辺の雰囲気を壊さぬたたずまい 

 次は、鎌倉——。 
 神社仏閣が多く、山も海もあり、観光とレジャーで多くの人が訪れます。鎌倉市にもトイレマップがありました。 

中心部から離れた場所のトイレ案内はありがたい 

 大仏ハイキングコースの葛原岡神社近くのトイレは新しくなり、バリアフリートイレも充実しました。一般トイレも清潔で使いやすいですね。めぐる各所に、きれいなトイレが用意されている。これは訪れる人にとって大きな安心です。 

葛原岡神社付近のトイレ。清潔で使いやすい

 ところで、ここまでの「おもてなし」を用意するには、それ相当のお金がかかっているに違いありません。景観への配慮、スペースの確保、設置費用、維持管理、清掃、備品。さらにトイレマップの作成、設置、書き換えや、利用上の注意喚起をする張り紙やHPへの掲載・更新などなど――。 
 観光客の来訪も一つの財源にはなりますが、それ以上のコストが自治体や地元住民に重くのしかかっているのではないでしょうか。民間企業が善意でトイレを貸し出したり、住民がトイレ周辺の清掃などを担っているケースもあります。そして観光客はこうしたトイレをタダで使っています。 
 鎌倉では、観光客でごった返す駅前のトイレに募金箱が設けられていました。 

寄付金はトイレの維持管理に使用する、と書かれています

 鶴岡八幡宮の脇には、民間が運営する有料トイレがありました。入ってみると、とてもきれいでパウダールームも充実しており、1回100円です。(2F:PAY TOILET – msarkkamakura 《エムズアークカマクラ》鎌倉800年の遺構と心地よい快適空間) 

トイレ使用に100円は妥当か? 私なら使います。有料トイレは、外の喧騒が嘘のような落ち着いた空間で、障害のある方や高齢の方にもおすすめ

 私は、こうした清潔さや使いやすさを担保する代わりに、有料のトイレはもっと増えていいのではないかと考えます。例えば、花の名所や有名なお祭りやイベントなど一時的に観光客が増える地域では、仮設トイレを設置する自治体もあると思いますが、有料化して観光客にも負担してもらえば、個数や清掃回数を増やすことができる。観光客にとっても悪い話ではないと思います。 
 すべてを有料にせよと言っているのではありません。誰もが気持ちよく利用できるトイレを持続可能にするためには、提供する側も疲弊しないシステムが必要です。有料・無料の選択肢を増やすことは、運営側にとっても利用者にとってもメリットがあるのではないでしょうか。高齢の方や外国から来る方が増えてきた今、そうした改革があってもいいと思います。 

 以下は2年ほど前、「世界共通トイレをめざす会」が会員を対象に行ったトイレの有料化についての独自アンケートの結果です。 

「おもてなし」の気持ちは、有料にふさわしい清潔さに加え、場所やトイレ内の設備、料金などの情報開示をしっかりすれば伝わるはずです。 
 観光客自身もトイレはきれいに使うこと。「旅の恥はかき捨て」ではなく、「立つ鳥跡を濁さず」の精神で! 

石川未紀

いしかわ・みき 出版社勤務を経て、フリーライター&編集者。社会福祉士。重度重複障害がある次女との外出を妨げるトイレの悩みを解消したい。また、障害の有無にかかわらず、すべての人がトイレのために外出をためらわない社会の実現をめざして、2023年「世界共通トイレをめざす会」を一人で立ち上げる。現在、協力してくれる仲間とともに、年間100以上のトイレをめぐり、世界のトイレを調査中。 著書に『私たちは動物とどう向き合えばいいのか』(論創社)。

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