【フォトエッセイ】星空をめぐる旅、そして物語◎永田美絵——第22回/夏の星座は神話を読んでから

第22回 夏の星座は神話を読んでから

 夏といえば花火大会や盆踊り、夏祭りなど、夜のイベントが多いため、夏の星を見るチャンスです。そもそも昼は暑いため、夕涼みがてら星を見上げるのがいいですよね。 
 夏の宵空、天高く見えるベガは一番見つけやすい夏の星です。頭の真上近くを通るので、方角がわからなくても大丈夫。 
 ベガから近くの星を結ぶと、夏の代表的な星座である、こと座が見つかります。 

 こと座は神話に登場する琴の名人オルフェウスのたて琴です。オルフェウスは愛する妻、エウリディケが毒蛇にかまれ死んでしまったことが受け入れられず、地下深くに住む死の王ハデスのもとに出かけるのです。泣きながら奏でる悲しい琴の音に心を動かされたハデスは、妻を地上に戻すと約束をしてくれたのですが、一つ条件を出します。 

 それは地上に戻るまで決して後ろを振り返ってエウリディケを見ないこと。 

 オルフェウスは喜んで約束をしますが、地上に戻る途中で何度も妻が後ろについてきているかを考えてしまいます。ようやく地上の光が見えたその時、がまんできずに、オルフェウスはハデスとの約束を破り、振り返ってしまうのです。エウリディケは死の世界へと連れ戻され、二度と会うことはできませんでした。 
 この時の琴が夜空にあがり、こと座になったという神話が残されています。明るいベガを持っている星座ですが、もの悲しいお話が残されているのです。 

 南の空に目を向けると、さそり座の心臓の星、アンタレスが見つかります。都会の空でも見える1等星ですが色合いが赤く見えるので、ほかの星と色の違いを楽しんでみてください。星には様々な色があることがわかります。 
 大きなさそり座を踏んづけているような夏の星座があります。 
 へびつかい座です。へびつかいと言えば、ヘビを操る大道芸人のようですが、実は優秀な名医のアスクレピオス。アスクレピオスは大きなヘビに患者の悪いところをかませて治療したと言います。 
 私だったらヘビが出てきただけで病室から逃げ出しますが、みなさんはいかがでしょう。 
 アスクレピオスの破天荒な治療法は、どんどん腕を上げ、やがて死人まで生き返らせたと言いますからすごいですね。 
 ところが死の世界に人が来なくなってしまったため、死の国の王ハデスがアスクレピオスを雷で撃ち殺してしまったのです。しかし多くの人を助けたアスクレピオスはへびつかい座として夏の夜空に上がりました。 
 頭の星ラス・アルハヴェから五角形の星並びが目印です。 

 星座をさらに楽しむ方法の一つは、神話を知ることかもしれません。星座の神話を知るとより深く思いをはせることができます。 
 今年の夏は、星座にまつわる神話を読んでから、夜空を見上げてみてはいかがでしょうか。 

夏の星空。夏の大三角や、へびつかい座のラス・アルハヴェが写っている。撮影場所は山梨県北杜市のひまわり畑。
写真提供=佐々木勇太(旅する星空解説員)
永田 美絵

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら

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