【フォトエッセイ】星空をめぐる旅、そして物語◎永田美絵——第23回/9月25日はぜひお月見を 

第23回 9月25日はぜひお月見を

 小さなお子さんから多い質問が、「どうしてお月様はついてくるように見えるの?」です。 
 子どものころは月を見上げ、どんなに速く走ってもついてくる月を不思議に思ったという方も多いでしょう。 
 この疑問の答えは、電車に乗って外の景色を見ると、近くの建物はすぐに後ろに去っていきますが、遠くの山や建物はあまり動かないように見えるのと同じ、ということになります。月は、山や建物よりはるかに遠くにあるため、地球上にいる限り、どこをどんなに速く走っても動かないように見えるわけです。 

 こうした質問をしてくれるのは、本当によく月を見ているお子さんです。大人になると夜空に月があるのは当たり前。月を見上げるくらいなら、スマホを見ているという大人が多いのかもしれません。実際、月を愛でるより、スマホ画面に夢中になってしまう方のほうが圧倒的に多いのだと思います。 

 しかし、月を見上げるべき日が、この日本にはちゃんとあります。 
 それが中秋の名月、お月見です。中秋の名月とは旧暦8月15日の夜に見える月のことで、今年2026年は9月25日(金曜日)です。毎年日付が変わるのは、旧暦の1ヵ月と、今の暦の1ヵ月の長さが違うためです。 
 旧暦の1ヵ月の長さは月が満ち欠けする29日ほど。今の暦の1ヵ月より短いのです。ですから今の暦になおすと毎年日付が変わります。 

 日本人は本当によく月を眺めていました。 
 月にまつわる伝説も多いですし、月の名前一つとっても三日月や十五夜の他に、望月(もちづき 満月のこと)、十六夜(いざよい 満月の翌日)、更待月(ふけまちづき 夜が更けてから出てくる月)、有明月(ありあけづき 明け方の空に見える月)、おぼろ月、名月、残月、寒月など数多くの呼び名があります。 
 私も月を見るのが大好きで、地平線からのぼってきた大きな赤い月を見ると、つい見入ってしまいます。 

 ところで以前大人の方から、「月の大きさが地平線近くだと大きく見える。なぜか?」と質問がありました。 
 みなさんも地平線近くの月が大きく見えると思ったことがあるのではないでしょうか? 
 実はこれ、目の錯覚です。地平線近くの空気が反射して、などではなく、人間の脳は地平線近くに山や建物があると、その大きさから推測して大きいと判断してしまうのだそう。 
「本当?」と疑う方は今度満月が東からのぼってきた時に、50円玉を持って腕をいっぱいに伸ばし穴に月を入れてみてください。この大きさがだいたいの月の視直径になります。 
 時間をおいて月が高くのぼってから同じように50円玉の穴の中に月を入れてみてください。大きさは同じはずです。 

「ふだん月なんか見ないや」という方も、今年は9月25日だけでも月をゆっくりと眺めてみることをお勧めします。 
 千年前の人びとも、いろいろな思いを抱きながら見上げていた中秋の名月。 
 心豊かな時間になること請け合いです。いい天気になるといいのですが。 

1枚目は東京の六本木ヒルズとお月様。2枚目は熊本城にかかる月 写真提供=佐々木勇太さん(旅する星空解説員) 
永田 美絵

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら

バックナンバー

<バックナンバー一覧へ>

この記事をSNSにシェア