第3回 私のミッション
私は、地球に生まれた誰もがミッションを持って生きているのだと思っています。ある人のミッションは働き、人の役に立つことかもしれませんし、人を育てることかもしれません。もしくは、好きなものを食べたり、旅行したりすることも、誰かを幸せにしている大切なミッションかもしれません。
私のミッションは、地球の素晴らしさと命の尊さを、星の話を通して伝えることです。
私は大学卒業後に憧れの天文博物館五島プラネタリウムに入りました。しかし、施設は老朽化のため、閉館。
その後子育てもあり、なかなか就職できず、多い時には八つのアルバイトをしながら日々過ごしていました。
プラネタリウム解説員のほか、塾講師やコンビニの店員まで、いろいろな仕事を掛け持ちでやっていたころ、自分がなぜ星の仕事をしたいのか? 自分のミッションは何かを考えました。
このときは仕事もままならず、自分がどうなるかもわからず苦しい時期でしたが、だからこそ自分が生きていく上での軸が欲しかったのです。
私がそのときに出した答えは、たとえ星にまつわる仕事に就けなくても宇宙を語ることはできる。大好きな天文の話をすることで、誰かの一日が少しでも意味のある素敵なものになれば――。
私がそう思えたのは、体験が元となっています。
プラネタリウム解説員になりたてのころ、プラネタリウムに入るわけでもなく、周辺をフラフラとして、おそらく学校をさぼっている中学生の男の子がいました。声をかけても返事もしません。
しかし何回か声をかけるうちに、彼の中で何か変化があったのか、プラネタリウムに入り、星を見ている姿を見かけるようになり、プラネタリウムスタッフもそんな彼に声をかけ、やがて彼の笑顔を見るまでになりました。
あとから知ったのですが、当時の彼の家には病気の弟さんがいて、父親は借金を残して家出してしまい、彼は母親と弟をたった一人で支えていたのです。しかしまだ中学生。どうにもできず自暴自棄に。
しかし、そんな彼が高校生になり、「俺、医者になる!」と言い出しました。彼は頑張って、やがて本当に医者になりました。
彼も今ではかわいい子どもたちに囲まれる良い父親です。
彼を変えたものは何でしょう? 私は大きな宇宙という存在だと思っています。人は、あらがえない大きな存在の前では謙虚になります。そして自分の力で進んでいくしかないことを悟ります。だから頑張れるのです。
私は毎年、九州の小学校を訪問して星の話をしています。
いまの子どもたちは自己肯定感が低く、自分なんて何もできない存在なんだと思いがちに見えます。だからこそ、「そんなことはないよ、〝奇跡の星・地球〟に生きている素晴らしい存在なんだよ」と伝えたいし、知ってほしい。
どんな人でも宇宙から見れば、同じ地球人。それぞれが地球の中でかけがえのない大切な存在だということを、忘れないでほしいのです。

一人ひとりがかけがえのない存在なんだということが伝わることを願って

北極星を目印に探すことができます。夜の8時から9時ころにかけて、南東の夜空で見つけてみましょう
写真提供=旅する星空解説員・佐々木勇太さん

ながた・みえ コスモプラネタリウム渋谷チーフ解説員。東京・品川生まれ。東京理科大学理学部物理学科卒業。キャッチフレーズは「癒しの星空解説員」。2000年からNHKラジオ第一『子ども科学電話相談』の「天文・宇宙」の回答者を務める。ご自身の名がついた小惑星(11528)Mie がある。著書に『カリスマ解説員の楽しい星空入門』(ちくま新書、2017年)など、監修に『小学館の図鑑NEO まどあけずかん うちゅう』(小学館、2022年)、『季節をめぐる 星座のものがたり 春』(汐文社、2022年)などがある。 コスモプラネタリウム渋谷の公式ホームページはこちら