【連載】トイレ事情を歩く◎石川未紀(世界共通トイレをめざす会) 第18回 /車いすユーザーのトイレの困りごと ―その1― 

第18回/車いすユーザーのトイレの困りごと ―その1―

 車いすユーザー、と聞いてどんなイメージを持ちますか? 
 車いすを使う理由はさまざまです。足が不自由な人だけではなく、体幹が弱い人や心臓や内臓に疾患を抱える人、高齢者や障害者の方で長時間歩行することが難しい人も車いすを使用します。 
 ですから、車いすユーザーのトイレの困りごとと言っても、利用者の状況が違えば、困りごとの内容もまるで違う、というのが実情だと思います。 
 そこで、今回はトイレに入るのに介助が必要な重度障害を抱える方の「バリアフリートイレ」の困りごとについて考えていきたいと思います。 

バリアフリートイレ内のレイアウトや設備はさまざま‥‥‥

 次女は6歳になるまで歩けませんでした。座位はとれたものの、年齢よりも極端に小さかったうえ、筋力も弱く不安定であったため、便座に座ることはできませんでした。 
 そのように言うと「でも、オムツをしているから大丈夫でしょう」と指摘されます。 

 では、聞きます。 
「もし、あなたが怪我や疾患のために、オムツをして外出しなければならなくなったとき、用を足したオムツで外出中ずっと過ごしても問題ありませんか」 

 ちょっと意地悪に聞こえたらごめんなさい。 
 しかし、オムツは万能ではありません。漏れることもあるし、臭いだってシャットアウトしてくれるわけではありません。オムツの品質は向上しているものの、子育て経験のある方だったらわかると思いますが、うんちをして放っておけば、あっという間にかぶれます。大人だって同じことです。 

 では、そのような方はどのように外出先でオムツを替えているか知っていますか? 
 バリアフリートイレ内にある大人用ベッド(ユニバーサルシート)で変えています。 
 しかし、バリアフリートイレにそのベッドがない場所も数多くあります。 
 新しい施設でさえも、です。 

 では、そのような方はどのようにしているのでしょうか? 
 ビニールシートなどを地べたに敷き、そこで替えているケースが多いのです。 
 初めて聞いたときは、耳を疑いました。 
 あの堅い床に? 濡れているときもあるのに? 

公共トイレである公園のバリアフリートイレ。広いが便器と洗面台に手すりのみ

 重い障害の方の中には、関節が硬直していたり、骨が折れやすい人もいます。そのような方を床に? 
 介助する方も大変です。大人を抱きかかえてそっと床に寝かせる、そして、今度は床から抱きかかえてそっと車いすに座らせる、とてつもない重労働です。 

 家族が付き添う場面では移動する自家用車内で替えるケースも多いようです。しかし、大人になった重度障害者の方にいつまでも家族が付き添うわけにはいきませんね。救護室を借りるという方もいましたが、必ずしも貸してくれるとは限りません。 

 これでは介助される方も介助する方も疲弊してしまうでしょう。よって、できる限り外出はしない、となったとしたら……。果たして、日本国憲法が保障する生存権「健康で文化的な最底限度の生活」を有していると言えるでしょうか。 

 大人用ベッドの設置が進まない理由はいろいろあると思います。 
 けれども、もしバリアフリートイレの設置義務があるような公共性の高い場所でも、ベッドを設置しないのであれば、提供する側が代替の方法(移動式ベッドの提供、救護室など別室への対応など)を持っておくべきではないでしょうか。 

 出かける前に確かめられるように、HPなどでバリアフリートイレの有無だけでなく、その設備内容についても記載しておけば、お互いの手間も省けると思います。そのうえで、車いすユーザーからトイレに対する問い合わせがあれば、真摯に応じてほしいと思います。 

比較的親切な案内。HPなどで事前にわかるとさらによいのだが

 独自アンケートに寄せられたコメントを一部抜粋して掲載します(プライバシー保護のため、内容を一部整理して掲載しています)。このコメントも約7割は家族や介助者の方のものです。本人は声を上げにくいという側面があることも、トイレの作り手の方にはもちろんですが、誰にでも知っておいてほしいと思います。

  • 大人用ベッドの有無が外からでも分かるように統一してほしい。並んで待って入ったとき大人用ベッドがないときの絶望感がすごい。
  • (バリアフリー)トイレがあるか心配で、大きなショッピングモールしかいけません。 小さな飲食店やチェーン店のトイレは使いにくいので、なるべく行かせないようにしています。 
  • 大人用ベッドの有無やサイズがHPに載っていない場合が多い。事前調査が思うようにできず、外出をためらう原因になる。 
  • ユニバーサルベッドがないところは、床にヨガマットを敷いてオムツを変えていたけれど、衛生面がとても気になる。だって地べただよ、汚れた床に子どもを寝かせるのは、とても悲しかった。 
石川未紀

いしかわ・みき 出版社勤務を経て、フリーライター&編集者。社会福祉士。重度重複障害がある次女との外出を妨げるトイレの悩みを解消したい。また、障害の有無にかかわらず、すべての人がトイレのために外出をためらわない社会の実現をめざして、2023年「世界共通トイレをめざす会」を一人で立ち上げる。現在、協力してくれる仲間とともに、年間100以上のトイレをめぐり、世界のトイレを調査中。 著書に『私たちは動物とどう向き合えばいいのか』(論創社)。

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